ヨメレンジャーとの抗争の巻 | RX-8不定期報告書

ヨメレンジャーとの抗争の巻

そろそろ行動の時が来た。
我がエイトに社外マフラーを装着するのだ。
三十路過ぎの男がマフラーひとつ買えんでどうする?
私は何の為に今まで男をやってきたのだ。
さぁ、買うぞ!。ヨメレンジャーなぞコテンパにしてやるわ。ワハハハハ。

 

私「あの~、今ちょっとお時間よろしいですか?」
嫁「ナニよ。あらたまって気持ち悪い。」
私「やはりですね。エイトには社外マフラーがお似合いかなぁと思うんですが・・・。」
嫁「ふ~ん。そういう事。ダメよ。ダメ。絶対ダメ。」
私「いやっ。でもっ。やはりスポーツカーなんで、スポーツカーらしくしないと。」
嫁「うちはスポーツカーなんて買ってません!。ファミリーカーを買ったんです!。」
私「でも、ほら、旦那さんはスポーツカーだと思ってるじゃないですか?。」
嫁「も~、いい加減にしてよ!。この前ホイール買ったばっかりでしょ!」
私「あれは旦那さんのお小遣いで買ったんじゃありませんでしたっけ?ねぇ。」
嫁「ウルサイ!いい加減にしないと怒るよ!」

 

と、リビングで格闘していると私のことを腹を痛めて産んだ母様登場。

 

嫁「お義母さ~ん。マフラー買うとか言ってるんだけど。何とかして。」
母「マフラー?車の?。」
嫁「ウン、そう。ぶぉんぶぉんうるさいやつ。」
母「も~あんた!!。いい加減しなさい!!いくつだと思ってるの!!」
私「母様、歳は関係ないです。マフラーは男のロマンです。」
母「も~ぉ、何がロマンよ!。どうしちゃったのかしらこの子ったら・・・。」

 

と、母様が嘆いていると、私の原型となる種を放出した父様登場。

 

父「何揉めてんだ?」
母「も~ぉ、この子がマフラー買うってきかないらしいのよ。」
父「マフラー?車の?別にいいじゃないかそのくらい。」

 

お~、さすが男同士、ロマンの意味がわかってるのだ。

 

母「ナニ言ってるのよ。ぶぉんぶぉんうるさいやつみたいよ。」
父「多少うるさかろうが車検は通るんだろ?ん?」
私「勿論です。父様。」
父「じゃあいいじゃないか。とやかく言うな。お前は黙ってろ。」
母「黙ってろって何よ!!。なんであんたにそんな事言われなきゃいけないのよ!。」
父「ナニ!?大体お前が小さい頃甘やかしたから、こんな我がままになったんだろ!」
母「ナニ言ってんのよ。大体、あんたが仕事仕事で家に帰ってこないからでしょ!」
父「なんだと~!!」
母「うちは、この子が小さい頃、よく母子家庭ですか?なんて言われてたのよ!!」
父「それとこれとは関係ないだろ!!俺はお前達の為に一生懸命働いてだなぁ!!」
母「あぁそうですか!!どこで遊んでたのか知らないですけど!!」
父「なんだその言い方は!!大体お前がだなぁ!!・・・」

 

ヤバイ・・・。
幼い私の知らないところで父様と母様にナニがあったかは知らないが
マフラーのせいで35年分の遺恨抗争が勃発してしまったようだ・・・。
とりあえず私達は巻き添えをくわぬよう2階へ避難する事にした。

 

嫁「なんかはじまっちゃったね・・・。」
私「ほら、君が余計な事言うからだよ。」
嫁「でもさ、お義母さんなら何とかしてくれると思ったんだもん。」
私「そうか・・・。そんなにイヤなのか・・・。じゃあ諦めるしかないのかな・・・。」
嫁「エッ!?諦めちゃうの?」

 

んんっ、このリアクション?ちょっとおかしいぞ?
もしかして、もしかして、ちょっとは脈があるのか?
普通だったら「ねっ、そうしなよ。」とか「あたり前でしょ。」とか
言うはずなのに・・・。
グルグル回る思考の中で私は直感的にイケル!と思った。
ココで勝負だ。勝負にでろ。
目の前の女性をボインのおねぇちゃんだと思え。
ココで最後の口説き文句だ。

 

私「どうでもいいけど、私も君に出会ってからマジメに働くようになったな。」
嫁「そうだね。社会不適合者だったもんね。」
私「やっぱり君がいるから頑張れるんだろうな。」
嫁「そうかな。でも元々働き者だったよ。」
私「イヤ、君に不憫な思いはさせたくないと思ってさ。頑張ってるのさ。」
嫁「そうなの?。なんか嬉しいな。」

 

ここでボインのおねぇちゃん嫁の瞳の奥にチラっと涙らしきものが見える。

 

嫁「ねぇ。ホントにマフラーいらないの?」

 

キタキター!。この言葉を待ってたんだ。
さぁ、もう少しだ。頑張るんだ。ボイン嫁を口説き落とせ!

 

私「欲しいけどね。君がイヤがるならやめとくよ・・・。君の方が大事だし。」
嫁「ホント?そんな風に思ってくれてるの?」
私「勿論さ。ナニよりも君が大事だよ。ねっ、Myハニー。」
嫁「ナンかテレるけど、うれしいわ。ねっ、Myダーリン。」
私「アハハハハッ。チュッ。」
嫁「ウフフフフッ。チュッ。」

 

耐えろ、耐えろ、この歯が浮くような状況を耐えろ。
修行するぞ、修行するぞ、修行するぞ。

 

嫁「う~ん、なんかマフラー買ってもいいかなぁって思えてきちゃった。」
私「ホント!?。ホントに買ってもいいの?」
嫁「しょうがないな~。いいわよ。ねっ、Myダーリン。」
私「アリガト。ねっ、Myハニー。」
嫁「ウフフフフッ。チュッ。」
私「アハハハハッ。チュッ。」

 

やり方としては3流ホスト真っ青のかなり卑怯な部類に入るとは思うが
手段を選んでいる状況ではなかったのだ・・・。
わかってほしい・・・。男なら・・・。
ヨメレンジャーをやっつけるのは容易ではないのだ・・・。

とりあえず、”嫁の同意”を得た私は
もう、嬉しくて嬉しくて舞い上がり
机の中をガサゴソと漁り、取り出したメモを嫁に渡す。

 

私「じゃあさ、明日ココに振り込んどいてくれる?」
嫁「・・・・・・・ンッ!?エッ、もう注文してるの??」

 

あっ・・・。致命的なミス・・・。私とした事が・・・。
嬉しくて後先考える事ができなかったのだろう・・・。

 

嫁「ふ~ん。もう注文してたんだ。じゃあ、さっきの全部猿芝居じゃん。」
私「あっ、いやっ、勿論キャンセルするつもりでいたんだよ。ねっ。ねっ。」
嫁「どうせウソッパチでしょ?買う気満々だったくせに。」
私「あっ、いやっ、でも一生懸命仕事してるから。ねっ。ねっ。ねっ。」
嫁「ふ~ん。仕事仕事ってどこで遊んでるんだか知らないけどっ。」
私「ナニ!?遊んでるだと?大体私が仕事してる間、お前はキテレツ三昧じゃないか!」
嫁「うるさい!。それとこれとは関係ないナリ!。」
私「関係ないナリとはなんだ!。貴様、私をバカにしてるのか!。・・・」

 

この日、我家は1階と2階で血みどろの抗争が繰り広げられたのであった。
リビングに戻ると、哀愁たっぷりの背中で酒を煽る父様の姿があった・・・。